2013年9月28日土曜日

さようなら「あまちゃん」、ありがとう!

ついに「あまちゃん」が最終回。

トンネルの入り口の光に向かってゆくアキとユイ。最後は堤防を走ってゆき、先端で海の彼方を見つめる。2人を海に飛び込ませなかったのが渋い。さすがクドカン!物語は終わりではなく、まだこれからも続いていくことを暗示する良いラストだった。



このドラマのヒロイン、アキはかなり不思議な存在だったと思う。

朝ドラって、主人公の成長を描くのが普通だけど、「あまちゃん」はアキが動くことで、周りが変わってゆく。春子と夏ばっぱの関係、春子、太巻き、鈴鹿ひろみの関係……みんな変わり、もつれた過去がほどけていった。

人々を幸福にするためにやってきた妖精のような存在だった。

演じた能年玲奈も、これ以上考えられないくらいキャラにぴったりで、おバカで、純粋で、自分の殻を破って行動するヒロインを見事に演じていた。






北三陸編の最期の回でこんな印象的なシーンがあった。

アイドルになるために上京する時、アキが駅に見送りにきた春子に、自分は1年前と変わったか、と訊く。春子は動き出す列車を追いかけながらこう告げる。

「変わってないよ、アキは。昔も今も、地味で暗くて、向上心も協調性も存在感も個性も華もない、パッとしない子だけど、だけど、みんなに好かれたね!こっちにきて、みんなに好かれた。あんたじゃなくて、みんなが変わったんだよ!自信持ちなさい、それはね、案外、すごいことなんだからね!」

「あまちゃん」のメインテーマのひとつはこれだった気がします。




このイラスト、オオシカケンイチさんというイラストレーターが描かれた作品です。これを見て驚くのは、1人として嫌いなキャラがいないこと。みんなクセがあったり、不完全だけど、愛すべきキャラばかり。

1人のキャラクラーも粗末にしないで、小さなエピソードで生命を吹き込んだのは、お見事としか言いようがない。

「あまちゃん」が素晴らしいドラマだったのは、登場人物全員にどこかしら魅力があり「キャラが立っていた」ことが要因の1つだと思う。

このドラマ、半年間にわたって、一回も「う、これはイヤだな」と嫌悪感を感じたり、「それはないわ」とシラけたりすることが一回もなかった。すごいことだと思う。絶対に信頼できる「品の良さ」みたいなものがあった。

ドラマの構成も練りに練っていた。これでもかと複雑に張り巡らされた伏線、おびただしい過去の作品からの引用とオマージュ。仕込んだネタに気がついたり、ツイッターや2ちゃんで知るのも楽しかった。

わかるやつだけ、わかれば……w



震災から復興への描き方も、デリケートで実に上手かった。タイミング的にも良かった気がする。大震災から2年たって、忘れちゃいけないと思ってるけど、ついつい忘れがちになった時期にドラマが始まった。もう一回、震災と被災地のことを考えるきっかけになったし、ブームが起きて被災地の復興支援への強烈な追い風になった。





アキが夏ばっぱに押されて海に飛び込むシーン、お座敷列車と種市先輩との別れ、アキとユイの失敗に終わる家出&東京行き、ミズタクが「男のけじめ」でユイに電話するシーン、いわゆるミズハグ、アキとサカナ君の「見つけてこわそう」、鈴鹿ひろみのコンサート……心を動かされたり、大笑いしたり、涙したりする場面がこれでもかと山盛りのドラマだった。

そんななかで個人的に最も好きなのは、深夜の「海女カフェ」で、グレたユイとアキが対決するシーン。録画を残していて、何度も見直し、そのたびにウルウルしているのは、我ながらちょっとマズイ……。

父親の病気、母親の失踪などでアイドルへの道がたたれてヤンキー化したユイが、アイドルになることやアキの現状を「ダサい」と冷笑的に否定すると、アキはユイが後から東京に来るから、つらい下積みの毎日に耐えていたのに、それはない、と怒る。ユイにダサいとわかっててアイドルを目指し続ける理由を聞かれて、アキはこう答える。

「楽しいからに決まってるべ!ダサいけど楽しいから!ユイちゃんと一緒だから楽しいからやってたんだべ!ダサいくらいなんだよ、我慢しろよ!」

さらにやり取りが続いたあとアキは「どんだけ不幸か知らねえが、ここで過ごした思い出まで否定されたらオラやってらんねえ!」と叫んで出て行ってしまう。そしてユイはユイでアキを傷つけたことに傷ついて、春子に慰められる……

こう書いているだけで、なんか涙腺がおかしくなってくるw

いろんなテーマが絡み合っているドラマだけど、アキとユイの友情もメインテーマの一つ。アキは無条件にユイが好きで憧れていて、その気持ちを受けてユイが変わっていくという関係。「海女カフェ」対決は見ていて、なんとも微笑ましく、切ないシークエンスだった。




もう一つ、心の奥から揺り動かされたのは、春子と夏ばっぱの和解。

ずっと恨んでいた母親から謝られて、「ああ、わたしは謝って欲しかったんだ……」と初めて気がつき、過去から解放され、癒やされる春子。

私は、人と人が仲直りしたり、和解したりする場面にヒジョーに弱い。それは、きっと私も何かと和解したい、とどこかで望んでいるのかもしれない、と気づかされました。

その他にも、春子、太巻、鈴鹿ひろみの和解、ユイと母親の和解……このドラマは人々が理解し合い、許し合い、和解する場面が多かった。

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それにしてももう月曜日になっても「あまちゃん」はないんだなぁ。夏が去って秋風が立ち、「あまちゃん」が終わり……じみじみ寂しい。

この半年間、笑って、泣いて、心を動かされた。こんなに朝ドラにハマッたのは初めてだった。「あまちゃん」のせいで日曜日に月曜が待ち遠しいとか、どう考えても「じぇじぇじぇ!」な異常事態だった。こんな体験をできたことに感謝すべきなのでしょう。

また特別編やスピンオフが制作されて、アキたちに会う日もあるだろう。それまで、ひとまずお別れだ。

さよなら「あまちゃん」、ありがとう!

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追記:


本当に最後の最後に気がついた。このオープニングのジャンプ、じぇじぇじぇ!の「J」ですよねwww

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