2015年11月9日月曜日

ダンスカンパニー「DAZZLE」の「二重ノ裁ク者」 DVDプレミア上映会



先日、関係者の方のお招きで「DAZZLE」というダンス・カンパニーの「二重ノ裁ク者」という作品を東銀座の東劇で見てきました。公演を生で見たわけではなく、作品を収録したDVDのプレミア上映会です。

現在のダンス・グループの公演がどのようなもので、表現レベルの水準がどれほどのものか全く知らない白紙状態で見てきました。

一言でいうと、かなり心を動かされ、パフォーマンスに引き込まれました。

物語は、架空の世界の全体主義国家における独裁者の息子と彼の家庭教師、そして父親との関係を描いたもの。正直に言うと、ストーリー自体は表面的で、あまり面白くないんです。でもそれを批判するのは意味がないし、ストーリーが作品の価値に占める割合は低い。

しかし、その物語を表現したダンス、音楽、舞台演出の総合は、映像・音楽的に圧倒的パワーがあり、美しかったです。そして主人公が(作者が?)心の深いところで感じている痛みのような複雑な感情はリアルに伝わってきました。

8人の正式メンバーと数人のゲストによるダンスの斬新さ、複雑さに、素人の私はかなり感銘を受けました。場面ひとつひとつの振付けはメンバー全員で練り上げ、演出は主宰の長谷川達也氏が担当したそうです。ボトルや新聞、旗などの小道具を使った演出も楽しかった。

ダンスの技術的な水準はわからないのですが、振り付けと演出の動きの一つ一つに膨大な時間をかけ、推敲されたものであることは私にも分かりました。「神は細部に宿る」というのは、建築を評した言葉だったと記憶しますが、この作品の魅力も徹底的に磨き上げられたディテールにあります。

そのダンスの素晴らしさを増幅しているのが音楽。全て長谷川氏がディレクトした各場面の曲想に基づいて作曲されたオリジナル曲だそうです。作曲はドラマ音楽を数多く手掛けている作曲家の林ゆうき氏です。

ピーター・ガブリエルやデヴィッド・リンチの作品の音楽を担当しているアンジェロ・バダラメンティを彷彿させる不気味なノイズが入ったダークな曲、ハウス風の透明感のある曲……どれも場面にマッチしていました。

光と影のコントラストを活かした複雑な照明も、狭いステージを驚くほど広く、奥行きのある空間に感じさせていました。

1つ例を上げると、強制収容所で囚人たちが、シャワー室で週一の入浴を楽しんでいる時に、毒ガスによって処刑されるというシークエンスがあります。ナチスのユダヤ人絶滅収容所からヒントを得たのがすぐわかるエピソードですが、そのパフォーマンスはすごかった。

久しぶりの入浴の喜びを表現したダンス、軽快な音楽、強烈な影によるシャワー室を描写は実に生き生きとしています。そして足元からがガスが流れ始め、真っ赤に照らされたシャワー室で、重低音が流れる中、囚人たち折り重なるように死んでゆく……その演劇的な効果は戦慄的でした。

最後にもう一つ、忘れてはいけないのがナレーション。なんと俳優の浅野忠信が担当しています。きっと、DAZZLEの才能に心を動かされて一肌脱いだに違いありませんw
その語りの素晴らしさは書くまでもないでしょう。

まあ、百聞は一見にしかず、YouTubeにトレーラーが公開されているので、よかったら見てみてください。DVDの正式リリースは12月17日。



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「DAZZLE」はもう19年のキャリアがあるダンス・カンパニーだそうです。こんなに豊かな表現力のあるパフォーマーたちがいたとは、まるで知りませんでした。



DAZZLE公式サイト
http://www.dazzle-net.jp/


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