2013年4月2日火曜日
フランス・ベーコン展 極私的感想
20歳くらいから何年間か画集から切り取ったこの絵を部屋の壁に貼っていました。英国のフランシス・ベーコンという画家が1949年に描いた「頭部Ⅵ」という作品です。
この絵を初めて見たときの圧倒的な衝撃を今でも覚えています。
どう表現して良いかわからなかったけど、この絵から伝わってくる痛みのような感覚がものすごく生々しく、切実に感じられた。その頃、わたしは、客観的に見れば別に取り立てて不幸ではなかったけど、どうしようもなく不幸な気分で過ごしていました。心にばっくり穴が開いてて、どうやってもそれを埋めることができず、精神的に飢えて、渇いていた。
この絵は、そのときの心象風景そのものずばりだったんでしょう。こう書くと、かなり小っ恥ずかしいものがありますが、そうだったから仕方がないw
あれから30年以上がたって、今、竹橋の東京国立近代美術館で大規模なベーコンの回顧展が行われています。「頭部Ⅵ」は来ていないのですが先週末、見に行ってきました。
作品は1940年代後半から1990年代初期まで33点。
決して大規模の展覧会じゃないけど、ベーコンの場合は一作、一作の衝撃が強烈なので、お腹いっぱいに。ヴィヴィドな色彩、歪んだ肉体の描写。見ていると五感が覚醒していくような強烈な喚起力はやはりすさまじいものがありました。
個人的には、ベーコンは1960年当たりを境にして、その喚起力が衰えていったように感じます。やはり自己模倣に陥ってしまっていること、あとベーコン自身、良くも悪くも安定してしまったんじゃないか、と推測しています。今回の回顧展は半数以上が1960年以前の初期作品で、私としては見応えがありました。
作品を見ながら、それにしてもずいぶん時間が流れたなぁ、と感慨にふけりました。
今もベーコンの絵を見れば、何かをかき立てられるけど、もう昔のように切実には感じられない。きっと感受性が麻痺して鈍感になり、不幸でも幸福でもないオジサンになったということでしょう。
奇妙なノスタルジーと喪失感を感じた回顧展でした。
フランス・ベーコン展
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