今でも記憶に生々しいアメリカのサブプライム住宅ローン危機とその数十倍の規模で世界を襲った金融危機。その渦中にあって、不動産市場の崩壊を冷静に見越して、ボロ儲けした男たちの映画「マネーショート」を見てきました。
私はこの映画には出てきませんが、サブプライム住宅ローン危機で150億ドルを稼ぎ出すという奇跡を成し遂げた投資家ジョン・ポールソンの物語「史上最大のボロ儲け」をだいぶ前に読んでいたので、物語自体にはほとんど新鮮さを感じませんでした。
でもリーマンショックの時、本当に世界の金融システムが崩壊して、日本経済も吹っ飛ぶんじゃなかろうか、とまじでビビッた日々を思い出したw
意味不明の日本語英語のタイトルが付いていますが、原題は「The Big Short」。ショートは「空売り」のことで、「大規模な空売り」という意味です。原作には「世紀の空売り 世界経済の破綻に賭けた男たち」という実にピッタリの邦題がついてるんだから、そのまま流用すればよかったのに。
サブプライム住宅ローン危機で大もうけした一握りの人たちは、クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)という金融商品で、実質的な空売りをかけたんです。
私もあまり詳しくないのですが、当時、サブプライムローンなどの不動産ローンを集めてミンチにして証券化した不動産担保証券(MBS)のデリバティブであるCDO、さらにそのデリバティブなどが世界中に出回っていました。複雑に合成されたデリバティブに、どのくらいの不良な債権が紛れ込んでいるのか、専門家にもわからない状態になっていた。
そのデリバティブの保険がCDSです。
不動産バブルが崩壊すれば、デリバティブがデフォルトする危険性が一気に高まるので、その保険であるCDSの値段が買ったときの数十倍に跳ね上がる。それを売り抜けて「史上最大のボロ儲け」をしたわけです。
映画では、CDOなどのデリバティブの仕組みを、積み木のモデルを使ったり、有名シェフが古い魚でシチューを作ることに例えたり、カジノのブラックジャックとそのプレイヤーにかける観客などに例えて、何とか理解させようと頑張ってましたw
あまり経済に興味のないカミさんも一緒に見たのですが、「なんとなく大まかな仕組みはわかった」と言ってたので、その試みはまずまず成功だったと言ってもいいでしょう。
最大の成功を収めたのはジョン・ポールソンですが、サブプライム住宅ローン危機を最初に見抜き、CDSによる「空売り」戦略を組上げたのは、クリスチャン・ベールが演じていた医師で投資ファンドマネージャーのマイケル・バリーでした。
しかしバリーは「空売り」を仕掛けるタイミングが早すぎたこと、顧客をきちんと説得できなかったことなどから、投資家たちがファンドから資金を引き揚げてしまい、莫大な利益を上げたものの、ポールソンのような「完全勝利」を収めることはできませんでした。映画ではその「苦い勝利」が印象的に描かれていた。
この「空売り」は、別の側面から見れば、何百万人もの人が家を失い、失業し、年金が破綻し、金融恐慌が起きることに全てを賭ける大ばくちでした。映画では、そのダークな側面もきちんと描かれていたのも良かったです。
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ところで「マネーショート」のエンドロールにはLed Zeppelinの「When The Levee Breaks」がフルで、爆音で、流れます。「天国への階段」が入ってる「4」の最後の曲(ホントはB面の最後と言いたい!)。すごくいい音で、一瞬、録り直したんじゃないかと思った。
Levee は「堤防」のこと。「堤防が決壊する時」、確かにこの映画にぴったりです。予告編にも使われているのですが、曲の使用許可を取るのにえらく苦労したそうです。ジミー・ペイジがどこにいるのか、予告編公開の直前までどうしてもわからなかったらしいw
ケチで悪名高い、ジミー・ペイジのこと、無断で使用したらえらいことになる!でも予告編公開を遅らせることはできない……。ギリギリで片田舎のパブにいるところを見つけ、OKを取ったそうです。
「エンドタイトルで使用する際は、一切編集はまかりならん」という条件付だったため、7分08秒、たっぷり超ヘヴィーなブルーズロックを堪能できましたw